画人画廊・on line vol.28 artist「イラスト作家FUYUKKO」2025年7月31日
一度は〝絵の道〟を諦めたけど…離れて気づいた「誇り」 イラスト作家・FUYUKOさん
※2024年心斎橋画人画廊で開催された初個展「きらめきのカケラたち」キービジュアル
子ども時代、「お姫様が好きで、いつか白馬に乗った王子様が来てくれる」と夢見ていたイラスト作家のFUYUKOさん。
絵を描くことも大好きで、新聞の折り込みチラシの裏やノートに鉛筆でお姫様の絵を描いていたそうです。
レベルの高いイラストに圧倒されて…
※アイコンにもしているミルクティーの絵。ウサギが何匹いてるか探したくなります。
小学生の頃から漫画家をめざし、ファンタジックな世界を好んで描いていました。中学に入ってからは絵を描く友達が増え、仲間同士でイラストや漫画を見せ合いながら楽しむ日々だったそうです。
「でも、絵はうまいほうではなく、どちらかというと下手くそなほうだったと思います。うまい子に『まねしてもいい?』と聞いて、見ながら描いていました」
インターネットでも個人が描いたハイレベルなイラストに触れる機会が増えました。「世の中うまい人ばっかりじゃん…」と感じ、漫画家の道は諦めてしまったそうです。
それでも絵を描くこと自体は好きで、高校では漫画研究会(漫研)に入りました。先輩や同級生も、絵の上手な人たちばかり。部誌に掲載された原画が配布される場では、画力の高い人の絵に人気が集まっていたそうです。
人をひきつける絵と、そうでない絵との差がはっきりと見える世界に触れ、「いつか私の絵も『ほしい』と思ってもらえるようになりたい」と、悔しさと向上心が芽生えたといいます。
その後はデジタルイラストにも挑戦し、女の子のキャラクターを中心に描いていました。
「もっとうまくなりたい」
高校卒業後はアート関係ではない専門学校に進学。そこで、FUYUKOさんの意識に変化があらわれます。
これまでと違って絵が趣味ではない人の空間では、絵のうまさを比較することはありません。画力にとらわれることなく、「絵を描く趣味は誇っていいものなんだ」と気づきました。
就職後も創作活動は続け、「もっとうまくなりたい」と初めて漫画のデッサンに関する教本を買いました。同時にコピック(アルコールマーカー)を使い始め、YouTube動画を見て研究したといいます。
※コピックに出会いアナログ作品を描き始めた頃。
「コピックはグラデーションがとてもきれいに仕上がり、表現の幅が広がりました。使う人によってもまったく異なる表現になるので、なんておもしろいんだろうと思いました」
その後、出産を機に仕事を辞め、子ども中心の生活になりました。次第に絵にかけられる時間が限られていったといいます。
「それまでのように色を重ねていくやり方だと時間が足りず、絵が描けないと気づきました。ではどうしたらいいだろうと考え、絵柄や使用する画材を変えて、限られた時間でも描ける方法を探しました」
※色数を絞ったデジタルイラストを自分のカラーにしていた頃
一時的に色数を抑えて描いていましたが、現在は顔彩(固形絵具)を使い、グラデーション表現を楽しんでいるといいます。
「お母さんになっても創作はやめなくていい」
※白を描くというチャレンジテーマで呉竹顔彩耽美を使い描いた作品。
小学生以下の子ども3人を育てながら、絵を描き続けているFUYUKOさん。
子どものひとりは、幼稚園時代に「大きくなったら絵を描く人になりたい」と話していたそうです。FUYUKOさんは、「将来の選択のひとつに絵を描く仕事が入っているというのはうれしいですね」と笑います。
FUYUKOさんのX(@fffuyuko)のプロフィールにも、「3児の母」という文字が並んでいます。
「子どもの存在を書いている理由は、『お母さんになっても創作をやめなくていいんだよ』『自由に楽しんでいる私を見て』と思ったから」です。
子どもが幼いほど手がかかり、子ども第一になる面もありますが、「お母さんになっても好きな趣味を貫いていい。そんな自分を肯定してあげたいと思っています」と話します。
これから出産を考えている作家さんに向けて、「子どもが3人いても楽しく絵を描いていると思っていただけたらいいな」という願いもありました。
FUYUKOさんは今後、YouTubeで様々な画材を紹介したり、小説を書いたり、創作の可能性を広げていきたいと話します。
※現在一番使用している画材である呉竹さんの顔彩耽美のメイキング動画
「あと、おばあちゃんになるまで絵を描いて、子育てが落ち着いたら日本全国の展示会や即売会、イベントに足を運びたいなと思っています」
※画人画廊での展示会がきっかけでパッケージデザインを担当していただいた「あの紙」はがきサイズ
◆プロフィール
FUYUKO(ふゆこ)さん:北陸地方在住のイラスト作家。2014年に展示会デビュー。その後、結婚・出産を経て、子育てをしながら2018年1月に作家活動を再開。3人の子どもを育てている。2024年1~2月には心斎橋画人画廊で初個展『きらめきのカケラたち』を開催。
YouTube(@fuyuko6789):https://www.youtube.com/@fuyuko6789
X(@fffuyuko):https://x.com/fffuyuko
◆使っている主な画材
・顔彩耽美(呉竹)
【今後の展示予定】
・2025年8月2日(土)〜8月16日(土)
Gallery-01(大阪府)「チョコミント展vol.10」
https://x.com/chocomint_vol10
・2025年9月20日(土)〜10月5日(日)
がふぅ恋猫(福井県)フレームレス原画展「今夜は月を眺めて」展
https://x.com/wind_web
・2025年9月23日(火・祝)
「そうさくマーケット」(大阪府)一次創作同人即売会
otaclub.jp
・2025年10月18日(土)〜10月26日(日)
Gallery glad.(大阪府)「手作りパレットに魅せられて」展
gallery-glad.amebaownd.com
・2025年11月16日(日)
「がーでんえふ〜じゅうよん〜」(福井県)オールジャンル同人即売会イベント
パンフレットの表紙
garden291efu.jimdofree.com
◆ライタープロフィール
河原夏季
朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。
SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。
1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。
クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。