「身近にある〝ちょっとした幸せ〟を伝えたい」イラストレーターRokoさん

画人画廊・on line vol.12 artist「Roko」2024年5月31日

「身近にある〝ちょっとした幸せ〟を伝えたい」イラストレーターRokoさん

※「きのこ図書館」

「幸せ」を感じるのはどんなときでしょうか? なにも「特別な幸せ」でなくていいのです。「ちょっとした幸せ」は身近にあるのに、余裕がなくて気づいていないだけかもしれません。

水彩画を描くイラストレーターで絵本作家のRoko(ロコ)さん(49)=神戸市在住=が作品を描く際のこだわりは、「ちょっとした幸せ」を表現すること。「絵本でもイラストでも、身近にある『幸せ』をお伝えできたら」と願い、動物や子どもたちをやさしいタッチで描きます。

昨日までつぼみだったバラが今日は咲いていた。コーヒーの香りに癒やされたーー。毎日同じようで同じではない、日々の小さな「幸せ」に着目します。

「同じような毎日でも、誰しも〝ちょっとした幸せ〟はあると思うんです。へこんでいるときは見落としがちですが、絵を見てほっこりして、幸せを感じてもらえたらいいなと思っています」

動物を擬人化して描くのは、見た人が物語に入りやすくなるように。水彩を使うのは、柔らかい雰囲気が出て「ホッとしてもらえるような」絵を描くためです。

同僚からのプレゼントで

幼い頃から絵を描くことが好きで、コンクールで受賞したり、教師に褒められたりしていたRokoさんですが、絵を描く仕事を夢見ることはなかったといいます。「絵を描く仕事は才能のある限られた人がなるものと思い込んで、私にできるはずがないと思っていました」

高校を卒業後、事務職に就いたRokoさん。「好きな道を進む」のではなく「お金を稼ぐ」ための選択でした。

そんな中、23歳で転機が訪れました。Rokoさんから「絵を描くことが好きだった」と聞いた仲の良い同僚たちが、誕生日に色鉛筆とスケッチブックをプレゼントしてくれたのです。

※2022年カワチ阪急三番街店・画人画廊での個展風景

Rokoさんは、再び絵を描き始めました。その後、絵を誰かに見てもらいたいと、フリーマーケットに出店したり、個展を開いたり、ポストカードを販売し始めたり、趣味で活動を続けていたそうです。

1冊の絵本に魅了され

活動を続ける中で、知人に『コートニー』(ジョン・バーニンガム作・絵/谷川俊太郎訳/ほるぷ出版)という犬が主人公の絵本を紹介されました。

小さい頃は読む習慣がなく、絵本は「遠い存在」でした。しかし、『コートニー』を通じて、「文章の中にはない表現やおもしろさを、絵で発見する」魅力を感じました。

「絵本ってなんておもしろいんだろう。子どものために作られた本だけど、大人が読んでもいろんな発見がある」

その頃から「絵本作家になりたい」と周囲に宣言し始めたといいます。

※代表作絵本「ねむいねむいおつきさま」

「美大も出ていないし、会社員だけど、働きながらでも絵本作家を目指してもいいんじゃないかな。なりたい気持ちは自由だから」

26歳のとき、京都で現役の作家が教えてくれる「絵本教室」を見つけ、働きながら片道2時間かけて教室に通って絵本の基礎を学びました。絵本作家を目指す仲間とも出会えたそうです。

ただ、教室に通ったからといって絵本作家になれるわけではなく、あくまでもひとつのきっかけでした。

夫に勧められた水彩画

色鉛筆から絵を描き始めたRokoさんは、その後もソフトパステルやオイルパステル、アクリルガッシュなど様々な画材を試していました。

水彩絵の具を使い始めたのは、イラストレーターの夫と出会い、「Rokoちゃんは水彩が合うんじゃないかな?」とアドバイスを受けたからです。

※水彩絵の具で描かれた素敵な世界観「星空のカーニバル」

「小学生も使う画材なので後回しにしていましたが、使ってみると予測できない水の広がりや重なりで、私の描きたい世界観にぴったりはまりました」

絵本教室での経験を経て、プロとしてデビューしたのは30代前半の頃。企業から依頼されてイラストを描きました。当時は会社員として働きながらイラストの仕事をしていましたが、イラストの依頼が多くなり、30代後半に独立しました。

※2023年カワチ心斎橋店・画人画廊での個展風景

2022年にはカワチ画材阪急三番街店、2023年にはカワチ画材心斎橋店のギャラリーで個展も開いています。

「誰かの記憶に残る仕事を」

Rokoさんが絵の世界に入り、世界観を築き上げた背景には、いくつものきっかけが重なっていました。

「絵が好きで描き始めて、多くの方に褒めていただく中で『楽しいな』と思う気持ちが強くなりました。絵本との出会いはとても大きくて、物語を書きたい、絵本作家になりたいという気持ちも強くなって。自分がどんなに絵が下手でも、『なれるはずがない』と言われても、諦めませんでした」

※「塩屋幼稚園バスラッピングデザイン」すてきなバスでワクワクしますね。

※「JRA2023年クリスマスイラスト」作品がまちのあちこちに飾られるのはクリエイター冥利につきますね。

一つ一つの仕事の積み重ねで「いま」があると話すRokoさん。絵本や雑誌の挿絵、ポスター、広告、幼稚園バスのラッピング……様々な仕事を経験しました。子どものコンクールの審査員になるなど、子どもたちに関わる仕事にも携わっています。

「絵本を出版することしか考えていなかった私ですが、いろんな仕事を通じて子どもに携わるイラストの仕事がしたいという明確な思いが生まれました」

親に「読んで読んで」と頼む絵本。毎日乗る幼稚園バス。大好きなイラストは、子どもでも大人でも記憶に残り続けます。

「絵本に限らず、これからも誰かの記憶に残る仕事ができたら幸せだなと思っています」

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◆プロフィール
Rokoさん:兵庫県神戸市在住のイラストレーター・絵本作家。「日常生活にある小さな幸せ」をテーマに、絵本のような世界を提案している。絵本をはじめ、雑誌の表紙・挿絵、楽譜、小学校教材の挿絵、まちがい探しイラスト、バスのラッピングデザインなど幅広く活動中。代表作絵本『ねむいねむいおつきさま』『おはなポコポコ』(いずれも三恵社)。HPは https://roko-color.com/ 。

◆使っている主な画材
・透明水彩絵具 ホルベイン、クサカベ、
・水彩紙 ウォーターフォード


◆ライタープロフィール

河原夏季

朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。

SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。

1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。

クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。

Twitter https://twitter.com/n_kawahara725

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