YOMU to KAKU マガジンvol.09 2026年3月24日
「できると楽しい!グラデーションの描き方」
絵を描いているとき、きれいに作りたいけど、実際にやってみると難しい。それが「グラデーション」ではないでしょうか。
「色がうまく混ざらない…」
「塗ったそばから乾いてくる…」
「何度も筆を動かすうちに、絵具が剥がれてしまった!」
などなど、アクリル絵具でグラデーションを描こうすると、なかなか思い通りにいかないものです。
こんにちは!画家のTAKUYA YONEZAWAです。
今回のYOMUtoKAKUマガジンでは「アクリル絵具のグラデーション」の描き方について解説します!グラデーションの大切さや、意識するポイント、具体的な描き方まで、画像たっぷりで解説するのでぜひ最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
これを読み終わった後にはきっと「試してみたい!」「描いてみたい!」と思えるはず。
ぜひ自分に合ったグラデーションの絵描き方を見つけて実践してみてください。
それでは、できると楽しい!!グラデーションの描き方を始めていきましょう!
1.グラデーションとは?
グラデーションとは、色と色とが段階的に滑らかにつながる彩色法のことを言います。
アクリル絵具のグラデーションは、絵具が乾かないうちに、色同士を混ぜ合わせることによって作ることができます。
でも、乾燥の早いアクリル絵具で滑らかな色の移り変わりを表現するのって結構難しい。ぼくは、アクリル画を始めた当初、グラデーションがうまく作れず、何度も試行錯誤を繰り返した経験があります。
もしかすると読者の皆さんも、美しいグラデーションを描きたかったけど、うまく色がつながらなかった経験があるかもしれません。
滑らかなグラデーションって、憧れますよね…!
2.グラデーションは表現の幅を広げてくれる!
グラデーションが描けるようになると、表現の幅が一気に広がります!
理由は、肉眼で見るほとんどのモチーフにグラデーションがあるからです。
例えば、この青い海景も、真っ赤なリンゴも
グラデーション(色の移り変わり)が存在します
ぼくたちが認識できているもののほとんどは、光があって影がある。そして、その間にはグラデーションが存在します。だからこそ、グラデーションが思った通りにつくれると、自然界のさまざまな表現を描くことができるのです。
3.グラデーションは絵を楽しくしてくれる!
グラデーションを自在に表現できると、描けるモチーフが増えます。そして、描けるモチーフが増えると、描くことがもっと楽しくなるはず!
純粋に、美しいグラデーションが描けると「こんなに綺麗な色の変化が作れた!」とテンションも上がります。
できるとすごく楽しくて、見た目にも美しい。さらに表現の幅も広がるのがアナログ絵画としてのグラデーションの素敵なところです。ぜひ身につけて、制作に活用してみてください✨
ここからは、実際にグラデーションの描き方について紹介していきます。制作の中で得た知識や経験を、なるべく分かりやすく図と言葉にしたので、読み進めながら、お手持ちの画材で試してみてください。
4. グラデーションっていっぱいある!
アクリル絵具でグラデーションを作る方法は、たくさんあります!使う道具によって作れる表情も違います🎨
さまざまな方法がありますが、今回は使用頻度の高い「筆によるグラデーション」をメインに解説していきます! 後半にはその他の方法も紹介するので、ぜひ読み進めてみてください🎨
筆でグラデーションを作ってみよう!
【必要な道具】
筆のグラデーションで使うのはこの4つ。
絵具、筆・刷毛、リターダー、霧吹き です
〇霧吹きを有効活用しよう!
まずグラデーションにおいて大切なアイテムに「霧吹き」があります。霧吹きは、グラデーションを始める前に紙やキャンバスに吹きかけたり、描いている途中に絵具が乾いてきた時などに使用します。(使いすぎると絵具が薄まってしまったり、下の絵具が溶け出してしまう場合があるので注意しましょう。)
霧吹きはスーパーやホームセンターなどで購入できるもので大丈夫です。
〇リターダーがあると便利!
リターダーというのは、絵具の乾燥を遅らせてくれるメディウムで、グラデーションを作る上で重要な役割を持つ画材です。(グラデーションメディウムなどメーカーによって名称は変わります。商品説明をよく読んで選んでみてください)

これを使うことによって絵具の乾燥を遅らせて、画面上で絵具が混ざり合いやすくするという効果があります。これを絵具に混ぜることによってグラデーション表現が、かなりやりやすくなるので、ぜひ使ってみてほしいです。
【支持体はキャンバスがおすすめ】
グラデーションを作る時の支持体はキャンバスがおすすめです。絵具の伸びが良く、滑らかな色彩の変化を作りやすいのが特徴です。画用紙でグラデーションを作る場合は、事前に霧吹きなどで画用紙を湿らせておくのが有効です。
【意識するポイント】
道具が揃ったら早速描いてみましょう!グラデーションを描くときには、以下3つのポイントを意識しながら表現するとうまくいきやすいです。
① 絵具は「たっぷり」
グラデーションに使う絵具は「ちょっと多いかな?」と思うくらいの量にしましょう。少なく作って途中で足りなくなったら対処が難しいためです。ぼくは必要かなと思う1.5倍程度の量を準備するようにしています。
② 乾燥はゆっくり
先ほども紹介したリターダーなどの乾燥遅延剤を混ぜることで、絵具がゆっくりと乾くようにコントロールします。このひと手間を加えることで、作業に余裕が生まれます。
③ 素早く丁寧に
とは言っても、アクリル絵具は乾燥が早いです。なので、グラデーションを作るときは手早く行うことが基本。 ぼくは「素早く丁寧に」を意識して行っています。
それでは実際にグラデーションを作ってみましょう!筆を使ったグラデーションを中心に、何種類か紹介していくので、ぜひご自身の制作スタイルに合わせて参考にしてみてください✨
【霧吹きを使ったグラデーション】
まずは一番身近な道具でできる霧吹きを使ったグラデーションの方法をご紹介します。
ステップ1:キャンバス全体を湿らせる
キャンバス全体に霧吹きで水を吹きかけて湿らせるようにします。水が一部に集中しないように均一に濡らすのがポイント。水滴が見えるくらいしっかり湿らせると、作業中に乾くことが少なくなります。
ステップ2:1色目の色をのせる
1色目の色を刷毛でのせていきます。絵具はチューブから出したまま、何も混ぜなくて大丈夫。キャンバス上の水分と絵具が混ざり合って塗りやすくなじんでくれます。

刷毛の動かし方は「一方通行」を基本にすると安定します。塗ったら浮かせて戻って、また塗って、と、動かして塗るように意識しましょう。
<POINT!>
グラデーションを作る時、初めのうちは「一方通行」の動きを基本にするのがおすすめです。左右に動かしながら描くこともできますが、色の移り変わりをコントロールするのが難しくなるので慣れないうちは「一方通行」を意識して描いてみましょう。
ステップ3:2色目の色をのせる
2色目は下から塗り始めて、徐々に上に進むイメージで塗っていきます。刷毛の動かし方はステップ2と同様に、「一方通行」を意識して、ゆっくりと上に進んでいきましょう。注意点は、途中で絵具を追加しないこと。色を途中で追加するとグラデーションが途切れる可能性があるため、最初に絵具をたっぷりとつけておきましょう。中央で2色が均等に混ざり合ったらステップ4へ進みましょう。
ステップ4:刷毛でなでる。
最後に、乾いた刷毛でキャンバス上を左右に往復するように、優しくなでます。この作業によって、絵具が均一にならされて、色の移り変わりがより滑らかに整います。刷毛は絵具が濃い部分から、だんだんと色の混ざり合いの部分に進むように進めていきましょう。このグラデーションだと緑色の部分からはじめて、毛を左右に動かしながら徐々に下に降りていきます。
刷毛は、キャンバスに押し付けるのではなく、少し触れるくらいの当て具合をキープして動かすのがポイントです。
作業は
①上から中央に向かってなでる
②刷毛についた絵具を拭いとる
③下から中央に向かってなでる
のように先述のステップ2・3と同じ動き方をすると、バランスの取れたグラデーションが作りやすいです。また、刷毛でなでる時は、一度進んだら引き返さないようにしましょう。途中で戻ったり、方向を変えたりすると、グラデーションが崩れることがあるためです。
なめらかな色変化が作れたら、これで完成です!
POINT「薄い」と思ったらもう一度
霧吹きを使ったグラデーションは、水を多用するので薄くなりやすいです。もしも「ちょっと薄いな・・・」と感じた場合には、完全に乾燥させた上で、上からもう一度グラデーションをかけると、濃くて滑らかな色変化を作ることができますよ!(ぼくは、下色が溶け出すのを防ぐために2〜3日乾燥させてから塗り重ねるようにしています。)
【リターダーでつくるグラデーション】
次はリターダーを使ったグラデーションの方法をご紹介します。絵具の乾燥を遅らせる効果のあるリターダー。持っていない、知らなかった!という方もいらっしゃるかもしれませんが、乾燥が遅くなる分、画面上で色を混ぜる余裕が生まれて、滑らかな色の移り変わりを表現しやすくなるので、おすすめです!
ステップ1:絵の具とリターダーを混ぜる。
まずはパレットの上に絵具とリターダーを出して混ぜ合わせます。リターダーはパレットのはじの方に出しておいて、必要な分だけ絵具に混ぜて使います。
絵具に混ぜるのは3割程度。絵具とリターダーをそれぞれ必要な分だけとって、パレット上で混ぜ合わせましょう。リターダーが多すぎると定着力が弱くなったり、表面がベタつく可能性があるためです。
グラデーションに使用する2色が出来上がりました!これで準備完了です。
ステップ2:筆のタッチで階調をつくる
筆のタッチで色を段階的に変化させていきます。絵の具が画面上で乾かないようにたっぷりと絵具をのせながら階調を作るのがポイントです。色を混ぜる比率を徐々に変えるように意識しながら描いてみましょう。
ステップ3:刷毛でならす
刷毛でならす工程は、霧吹きで作るグラデーションと同じです。大切な部分なので、改めてご説明します。
刷毛で、キャンバス上を左右に往復するように、優しくなでます。刷毛は絵具が濃い部分から、だんだんと色の混ざり合いの部分に進むように進めていきましょう。このグラデーションだと濃い青の部分からはじめて、毛を左右に動かしながら徐々に下に降りていきます。
刷毛は、キャンバスに押し付けるのではなく、少し触れるくらいの当て具合をキープして動かすのがポイントです。絵具の粒子が動いて、段々とグラデーションが滑らかになっていきますよ!
そのまま一番下まで動かして完成にしてもいいですが、そうすると青の幅が大きくなりすぎてしまう可能性があります。そんな時は、7割くらいのところで一度止めて、水色の部分から上に上がるように刷毛を動かしていくと、バランスの取れたグラデーションが作りやすいです。
回数を分けてなでる場合は、毎回刷毛についた絵具を拭ってから作業すると色のつながりが崩れにくいです。。
グラデーションがだんだん滑らかになっていって、ワクワクするひとときです!
好みの混ざり具合になったら完成🎨✨
筆を使ったグラデーションの基本はこの3ステップです。塗る面積が大きくなるほど、途中で乾燥するリスクも高まります。もし途中で乾いてきたら霧吹きで画面に水を吹きかけて水分を維持しながらやってみましょう。(3〜40cmほど離して均一に吹きかけるのが◎)
最初は難しいかもしれませんが、慣れるとだんだん色がつながるようになって楽しくなってくると思います!
【コラム:筆1本でつくるグラデーション】
筆で作るグラデーションの別の方法として、ぼくがよく行っている刷毛や平筆一本で作ることができるグラデーションも紹介します。
図のように筆の両端に別の色をつけて、筆を動かしながら色を混ぜ合わせてグラデーションを作る方法です。小さな面積ならこの方法の方が滑らかに描くことができる場合もあります。あまり幅広いグラデーションは作れませんが、霧吹きやリターダーを使わずに、難易度も高くないので、ぜひ気軽な気持ちで試してみてください!
その他のグラデーション技法
ここからは筆以外で行うグラデーションの作り方について解説します。グラデーションって筆で描くものと思いがちかもしれませんが、様々な画材を使って表現することが可能です。それぞれの表現方法によって風合いが変化するので、ぜひ自分の表現に合ったグラデーション方法を試してみてください。
【ペインティングナイフを使ったグラデーション】
パレット上で絵具を混ぜ合わせてグラデーションを作った状態で塗ります。厚塗りになるので、色のはっきりとした力強いグラデーションを作ることができます。(霧吹きやリターダーも使用しなくてOKです)
ぼくはこの方法で絵具の宝石のグラデーションも描いています。
(KAWACHI心斎橋店 画人画廊での展示2025年11月より)
【スパッタリングを使ったグラデーション】
金網とブラシを使って絵具を霧状にして表現する方法です。淡く柔らかなグラデーションを作ることができます。図工の授業などで使った方も多いかもしれませんね!
水で薄く溶いたアクリル絵具を歯ブラシにつけて、網でシャカシャカ。歯ブラシを動かす速度や、往復する回数を調節しながら、グラデーションを作ります。
2色目も、同様に反対方向からシャカシャカと着彩していき、好みの濃さと色の混ざり具合になったら完成です!
絵の具の粒子を感じる独特の表情が特徴的!ぼくは地面や砂浜を描くときなどにも活用しています。
【スポンジを使ったグラデーション】
スポンジに絵の具をつけて叩くように塗ると、柔らかなグラデーションを作れます。雲のようなふわふわした表現も得意です。
スポンジは量販店などで購入できるもので大丈夫。ぼくはメイクなどに使うスポンジが、叩きつけた時の表情が細やかで、手で持ちやすい大きさなので、愛用しています。
ポンポンと叩きつけながら色の変化をつけていき、グラデーションの完成です。
【エアブラシを使ったグラデーション】
最後にエアブラシを使った方法を紹介します。エアブラシは設備を揃える必要がありますが 、非常になめらかな階調を表現できるツールです。
多めの水で溶いた絵具をエアブラシのカップに入れて、それを細かい霧状にして吹き出すことで色をつけていきます。仕上がったものがこちら。
このように、使い慣れるとすごくなめらかなグラデーションを描くことができるのです!筆やナイフなどでは表現できない表情が作れるので、使う機会があればぜひ試してみてください✨
グラデーションって楽しい!
いかがだったでしょうか?
今回はアクリル絵具のグラデーション表現について解説しました。グラデーションの大切さと可能性を感じていただけたら、とても嬉しいです。
ご紹介したグラデーションの方法は、あくまでもぼく自身が試行錯誤を重ねてきた中で、やりやすいと感じた方法になります。ぼく自身もまだまだ研究途中ではありますが、「これ、使えるかも!?」「やってみたい!」と思っていただける内容が、一つでもあったなら嬉しいです。
ちょっと難しいけど、できたらすごく楽しいし、表現の幅が広がる!それがグラデーションです。
この記事を参考にしていただきながら、ぜひ自分なりの描き方を探してみてください✨
素敵なグラデーションが、作品が仕上がりますように!
応援しています✨
それでは、素敵な制作ライフを!
画家
TAKUYA YONEZAWA
◆プロフィール
TAKUYA YONEZAWA
北海道在住。毎年50作品以上の絵画作品を制作し、美術館や国内外のギャラリーなどで発表している。SNSでの発信に力を入れ、作品や制作過程、創作のヒントなどを発信。Xは@takuyanokaiga。
アクリル画のことが基礎から応用まで学べる技法書「基礎がわかる 技法が身につくアクリル画の教科書」執筆
◆使っている主な画材
・アクリル絵具 アムステルダム レギュラータイプ ロイヤルターレンス
・アクリル絵具 アムステルダム パールシリーズ ロイヤルターレンス
・ペインティングナイフ リキテックス バニーコルアート
・ペンディングナイフ ロイヤルターレンス













































