画人画廊・on line vol.33 artist「イラストレーター・吉田麻乃」2025年12月9日
「雲はわたがしで……」子どもが夢みる〝空想の世界〟を描くイラストレーター・吉田麻乃さん
「空に浮かぶ雲はわたがしで、食べられると思っていたんです」。そう語るのは、イラストレーターで絵本作家の吉田麻乃さん。子どもの頃の〝空想力〟を大切に、作品を描いています。
雲の上に寝転ぶシロクマとペンギン、空を泳ぐクジラ、夜空をかけるバク……。やわらかなタッチで、子どもが夢みる世界を表現してきました。
「友達との会話のきっかけ」になった絵
絵を描くことが趣味の祖母の影響で、幼い頃から色鉛筆や水彩、油絵の画材は身近な存在でした。当時人気だったキャラクターや母親をモデルに絵を描いて楽しんでいたといいます。
「母親は絵を描かなかったので、私が描くと『上手に描けてすごいね』と喜んでくれました。それがうれしくて、いつも絵ばかり描いていました」
父親の仕事の都合で中学生になるまでは全国各地を転々としていた吉田さん。新しい学校ですぐに友達ができなかったとき、ひとり遊びの定番は絵を描くことでした。
※背景やゾウの背中の芝生の部分などしっかり描きこまれた作品
勉強や運動は得意ではありませんでしたが、唯一、美術には自信がありました。クラスメートに「この絵どうやって描くの?」と言われるなどコミュニケーションのきっかけになっていたといいます。
絵本も大好きで、中学生になると毎日のように本屋へ立ち寄りました。特に心を動かされたのが、台湾の絵本作家ジミー・リャオさんの『君といたとき、いないとき』との出会いです。
「寂しさや日常に寄り添ってくれるような絵本で、いつかこんな絵本を描きたいと思いました」
以来、絵本作家は憧れの職業に。中学校では美術部に所属し、高校は美術科で学びました。
一方で「早く自立した生活をしたい」と考え、就職率の高いデザイン専門学校に進学。卒業後はデザイン会社に就職しました。
絵を学びにイタリアへ
働きながら絵を描き続け、小さなギャラリーで友人と個展を開いたこともありました。「個展で油絵を買ってくださった方が『子ども部屋に飾ります』と言ってくれて、『私はこういう仕事をしたかったんだ』と思いました」
しかし、デザイナーとしての仕事と創作の両立は思うようにいかず、就職から2~3年ほど経った頃に退職を決意。作家として活動する道を選びました。
吉田さんは、「当時は想像通りに描く技術が足りていませんでした」と振り返ります。「例えば動物と観覧車を描いても、観覧車の造形を自分のイメージ通りに描けず四苦八苦していました。基礎力の大事さを実感しました」
そこで「芸術の国へ行って街や建物をスケッチしたい」と考え、イタリアで3カ月ホームステイをしながら絵の勉強をすることにしました。
※イタリアに行った際のスケッチ
「イタリア語は話せませんでしたが、『トゥルッリ』を描きたいと思っていました」
トゥルッリとは、イタリア南部・アルベロベッロに多く見られる転倒的な石造りの家屋のことです。
「絵本の中に出てくるような建物で、どうしても自分の目で見てみたいと思いました。イタリアでは美術館に入らなくても、街中に描きたい美術の素材があります」
※2026年にグッズとして販売予定のイラスト。イタリアの「トゥルッリ」をモチーフにした作品。
「それと、イタリアでは『ボローニャ国際絵本原画展』という世界最大級の絵本原画のコンクールも開かれていて絵本が有名なイメージがあり、とにかく行ってみたかったんです」
ホームステイ先は計4カ所。ローマやフィレンツェ、ヴェネツィア、アルベロベッロといった地域を回り、毎日絵を描いていました。
スケッチをしていると、気さくに声をかけてくれる人が多かったといいます。「外でスケッチしている人もすごく多くて、子どもから大人まで外国人の私にも『何描いているの?』『その絵ほしい』と話しかけてくれました」
現地ではモザイク画やフレスコ画の制作も体験したそうです。
イタリアでのスケッチや体験は、現在イラストのデザインにも活かしているといいます。
大切にしているのは〝子どもの空想力〟
※グッズなどで見たことある方も多いのでは?編集者が一番好きな作品です。
帰国後、吉田さんは本格的に作家活動を始めました。10年ほど前からカワチ画材では個展を開いたり、グッズを販売したりしているほか、生活雑貨専門店「ロフト」や「ハンズ」でも、メッセージブックや手帳などを展開しています。
モチーフの多くは動物で、特にクジラやペンギン、シロクマといった海の生き物を描きます。もともと水族館が大好きで、絵本作家をめざす前はドルフィントレーナーを夢見ていたそうです。
吉田さんは、イラストを描く上で〝子ども心〟を大切にしています。
「動物に現実ではないものをプラスすることが多いのですが、大元には〝子どもの空想力〟があります。小さい頃、『雲はわたがしでできていて、食べられる』『雲に乗ってみたい』と思っていました。大人になると子どもの頃の気持ちを忘れてしまいがちですが、ずっと大事にしていきたいと思います」
小さい頃から読んできた絵本の存在も大きく、「内容を細かく覚えていなくても、読んだ本は自分の中に蓄積されているように感じています」と話します。
今後は、絵本の制作にも力を入れ、「ボローニャ国際絵本原画展」への出品やアートバザーへの参加も考えているそうです。
◆プロフィール
吉田麻乃さん:大阪府在住の絵本作家・イラストレーター。北海道芸術デザイン専門学校卒業。3カ月間イタリアでホームステイをしながらスケッチをして各地の美術館等を周り、モザイク画やフレスコ画のレッスンを受ける。現在は全国の東急ハンズや文具店などでグッズを販売中。
Instagram(@asanoyoshida):https://instagram.com/asanoyoshida
Twitter:http://twitter.com@asanoyoshida
◆使っている主な画材
・アクリル絵の具
【今後の展示予定】
・2026年5月16日(土)~6月4日(木)
カワチ画材阪急三番街店
大阪府大阪市北区芝田1-1-3阪急三番街北館地下1F
Tel:06-6372-3888
◆ライタープロフィール
河原夏季
朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。
SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。
1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。
クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。



















