「独特な目を描きますね」言われて意識した魅力 イラストレーター/画家・中野夕衣さん

画人画廊・on line vol.15 artist「中野 夕衣」2024年8月30日

「独特な目を描きますね」言われて意識した魅力 イラストレーター/画家・中野夕衣さん

イラストレーターで画家の中野夕衣さん=神戸市在住=は、女の子や童話のキャラクターをモチーフに、淡くやさしいタッチで作品を描きます。

※細かいところまで描きこまれた素敵な作品。編集者は個人的に床にある青いリボンの持ち主が気になります。

一番のこだわりは「目」。描かれるキャラクターのまなざしは印象的です。

幼稚園の頃から外で遊ぶよりも家で絵を描くほうが好きだったという中野さん。小学生になって少女漫画雑誌『なかよし』や『りぼん』を読み始めてからは、「好きな漫画家さんの絵をまねして描いていました」と話します。

少女漫画の登場人物たちのキラキラと輝く「かわいい目」に憧れ、特に種村有菜さんの『神風怪盗ジャンヌ』に影響を受けたそうです。

以来、「女の子を描くことが好きで、ずっと描いていました」。趣味で漫画も描いていたといいます。

イラストレーションを学ぶ

高校時代までは、描いた作品を友だちに見せたり、お絵描き掲示板にアップしたりしていました。

同じく絵や漫画を描くことが好きな人たちから「かわいい」「きれい」と感想をもらうことがモチベーションにもつながっていたといいます。

しかし、作品展に応募したり、雑誌に投稿したりすることはなく、個人で楽しむことが中心だったそうです。

※大学時代の作品。背景や小道具など、今に通ずる部分がありますね。

大学ではイラストレーションを学びたいと考え、神戸芸術工科大学ビジュアルデザイン学科に入学しました。

デザインやイラストの基礎知識、企画・表現力……専門的な授業を通して技術を磨き、恩師や友人たちから刺激をもらう日々でした。

大学2年で初めての個展に挑戦

大学2年の春には、小さなギャラリーを借りて初めて個展を開きました。

高校時代に通っていた画塾の友人がグループ展を開いたことに背中を押されたそうです。

個展では、童話をテーマにした作品を展示しました。童話の中でも、特に好きな作品が『不思議の国のアリス』です。

※不思議の国アリスをモチーフにした作

ストーリーはもちろん、ウォルト・ディズニーが製作した長編アニメーションのキャラクターデザインに惹かれたといいます。

当時は今の画風とは異なり、ビビッドな色を使って描いていました。

「目力に吸い込まれそう」

いまでこそ「目」を意識している中野さんですが、そのきっかけとなったのは大学時代だったといいます。

これまで以上に多くの作品を目にするようになったり、個展などで周りからの〝評価〟を聞いたりする機会も増えました。

「『独特な目を描くね』『目力に吸い込まれそう』と言っていただけるようになりました」

※中野夕衣さんの作品は編集者は個人的に「布」の表現も大好きです。

周囲の意見を聞き、自身のイラストの魅力やこだわりに気づくことがあるという中野さん。

少女漫画のキラキラした瞳に影響を受け、理想のかわいさを追求していった結果、見る人の心に残る瞳になっていったそうです。

「誰かと話すときもよく『目』を見ますし、女の子はメイクで目の印象が変わり、大切なパーツだと思います」

絵の具で表現する世界

大学を卒業後、フリーランスとして活動するなかで、現在の淡いタッチに変えました。

近年の代表作は、女の子とウサギを描いた「Parade」(2022年)です。

※「Parade」(2022年)

普段、A4~大きくてもA3に描くことが多い中野さんですが、この作品はF10サイズ(530×455)のキャンバスに描きました。

「これまでも大きな絵を描いたことはありましたが、顔をアップで描くことは初めてでした。来場者の方には『こんなに大きいんですね』と驚かれました」

※愛用の画材達。ガッシュと呼ばれるツヤ無し不透明の絵具で描かれています

中野さんの作品はアクリル絵の具で描かれていますが、「デジタルかと思った」と言われることも多いそうです。

「絵の具の表現が好きなんです。塗った跡や筆の流れ、凹凸など、絵の具の質感はデジタルでは表せません」

※直近2024年の作品

2019年以降、カワチ画材心斎橋店などでのアートマルシェに参加し、グッズの販売や個展を開催してきました。

今後については、「画集の制作や百貨店での個展、本の装画を担当したい」と話しています。

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◆プロフィール
中野夕衣さん:画家・イラストレーター。1988年、神戸市出身。神戸芸術工科大学ビジュアルデザイン学科卒業。少女漫画の要素を織り交ぜながらロマンティックでどこかクラシカルなイラストをアクリル絵の具で描く。個展や企画展、アートイベントに参加し、関西・関東を中心に幅広く活動。

◆使っている主な画材
・アクリル絵の具 ホルベイン アクリルガッシュ
・筆 ホルベイン アルビデレオなど


◆ライタープロフィール

河原夏季

朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。

SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。

1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。

クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。

Twitter https://twitter.com/n_kawahara725

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