画人画廊・on line vol.17 artist「ときめきぬいぐるみクリエイター・ハタヤエリ」2024年10月15日
独学でたどり着いた癒やしの「クオッカちゃん」…ときめきぬいぐるみクリエイター・ハタヤエリさん
ふわふわでモコモコ。つぶらな瞳でちょこんとたたずむ。
ときめきぬいぐるみクリエイターのハタヤエリさんが作る「クオッカちゃん」は、オーストラリアに生息する小型のカンガルー「クオッカ(クオッカワラビー)」がモチーフです。ひとつひとつ丁寧に、手作りで制作しています。
※右から2番目の茶色い子がクオッカちゃん
ハタヤさんがぬいぐるみ制作を始めたのは5年ほど前。
友人たちと楽しくお酒を飲んだ帰り道、ひとりで歩いていたハタヤさんのもとに、「ぬいぐるみを作りなさい」という〝天の声〟が降ってきたといいます。
「酔っ払っていたこともありますが、『そうだ、京都へ行こう』のような勢いで『そうだ、ぬいぐるみを作ろう』とひらめきました」
それまでもイラストやデザインの仕事はしていましたが、ぬいぐるみ制作はまったくの素人。ブログやSNS、書籍を参考に作り方を学んだといいます。
「気持ちを和らげてくれる存在に」
ハタヤさんにとって、ぬいぐるみは「家族や友達のような、身近にいる気の許せる仲間」です。
「例えば、アニメや漫画で主人公の肩に乗っている小さな生き物やそばにいてくれるドラえもんなど、ひとりぼっちの気持ちを和らげてくれる存在を作りたいと思いました」
※マーチングクオッカちゃん達のたのしい演奏が聞こえてきそう♪
制作する上では、ひとつひとつの見た目のかわいさはもちろん、買ってくれた人にとって「いい感じの相棒」になれるよう願いを込めます。
「ぬいぐるみは屋外ではなく家のなかに置くものだと思います。一緒に暮らすほっとする存在であってほしいです。デコってもらっても、買い物に連れていってもらってもいい。ぬいぐるみとの距離感は、迎えてくれた方が決めてくださったらと思います」
モチーフになっているクオッカは、いつも笑っているように見えることから「世界一しあわせな動物」と呼ばれています。「クオッカちゃん」のやさしくほほえむ表情は、ハタヤさん自身がクオッカに感じた魅力を表しました。
「感情を押しつけてくるような表情ではなく、私自身が素朴な顔が好きだからというのもあって今の表情にしています。一緒に『ふふっ』とできるような感じです」
絵を描くことに夢中だった幼少期
幼稚園に通っていた頃から絵を描くことが大好きだったハタヤさん。『美少女戦士セーラームーン』のアニメに夢中で、キャラクターの絵を描いていたといいます。
「あるとき、母が紙を折って冊子状にして、『ここに絵を描いていったら漫画ができるんだよ』と教えてくれました。子どもの私にとって『漫画って自分で描けるんだ』ととても衝撃で、創作の原点かもしれません」
紙やチラシの裏、ノート……。小学生になっても毎日絵を描き、高学年になるとつけペンや定規、原稿用紙が入った「漫画家セット」を買ってもらったといいます。
表現やものづくりに関する仕事に憧れ、高校卒業後は美術大学のグラフィックデザイン科に進みました。
新卒でデザイナーとして働いた後、「環境を変えよう」と地元の神奈川県藤沢市を離れ、大阪に移住。以来、カワチ画材阪急三番街店や心斎橋店などで画材を購入していたそうです。
クオッカとの出会い
アルバイトをしながらイラストやデザインの仕事を続けていたとき、ハタヤさんはInstagramで偶然クオッカの存在を知りました。
「『なんてかわいい生き物だろう!』と思いました。新しいポケモンに出会ったような感じです」
それからクオッカをモチーフにイラストを描き始めたハタヤさん。ぬいぐるみを作ろうと一念発起した際も、モチーフにすることに何ら迷いはありませんでした。
※それぞれ個性的な表情が可愛いですね
2019年1月に初めて「クオッカちゃん」を作り、Twitter(現・X)に投稿すると、知り合いやフォロワーさんたちから好反応が寄せられたそうです。「たくさん作ったらもっと上手にできるのではないかと思いました」とハタヤさんは振り返ります。
美大に通っていた頃は、「立体的なものを作るのには向いていない」と苦手意識があったハタヤさん。「粘土で裸婦像を作る授業があったのですが、びっくりするくらい下手くそで『こりゃダメだ』と思っていました」
それでも、「立体的なものを作ってみたい」という思いは心に残っていて、〝天の声〟に背中を押されたのだそうです。
SNSでバズって知名度アップ
ぬいぐるみ制作を始めて約1年、2020年1月に「クオッカちゃん」の友達の「エビ天」をSNSに投稿したところ、「かわいすぎる」「めちゃくちゃほしい」「センスある」といったコメントが寄せられ、2万「いいね」がつきました。
「エビ天」がバズったことで「クオッカちゃん」の存在も知られることとなり、SNSでたびたび注目されるようになったといいます。
大手企業からコラボの依頼が寄せられ、カワチ画材とも縁があってオリジナルグッズの販売を始めました。各地で展示会も開かれています。イベントや個展で「クオッカちゃん」を販売すると、即完売するほどの人気です。
※エビ天ちゃんは編集者も”推し”です♪
※当社通販サイトで「ハタヤエリ」さんのコラボグッズ展開中です。期間限定のカレンダーもあります。詳しくは上記画像をクリックしてくださいね↑
手作りのため、作れるのは多い日で5体ほど。購入を希望する場合は、ハタヤさんのSNSで情報をこまめにチェックする必要があるといいます。
「自分の好きなものを作ってたくさんの人に喜んでもらえ、夢がかないまくりの毎日です」と話すハタヤさん。さらに「今後はアニメ化など動画にもチャレンジしていけたら」と語ります。
SNSから活動が広がった一方で、一時のバズりに頼らず長く愛されていくためにはどうしたらいいのかも考えています。
「10年後、20年後も続けていくためには、新しいキャラクターが必要かもしれませんし、『クオッカちゃん』だけを作っていくのもいいかもと思っています。AIにはできないことですよね」
時代が進むにつれて、ぬいぐるみの価値も変わっていくかもしれないーー。答えがないからこそ、柔軟性も必要だと考えます。
「ぬいぐるみへの価値観が変わったとしても、一部の愛好家に好かれていたい。時代に合わせつつ、変えない部分は変えずに続けていきたいと思います」
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◆プロフィール
ハタヤエリさん:ときめきぬいぐるみクリエイター。1986年、神奈川県生まれ。大阪府在住。2019年よりブランド名「JUNK FOOD OPERA」としてぬいぐるみ作家で独立。オリジナルキャラクター「クオッカちゃん」のぬいぐるみを中心に、日常の中にわくわくとときめきをプラスする、かわいいものづくりをモットーに制作をする。Xは@junkfoodopera。Instagramは@quokkasan。
◆使っている主な素材や道具
【ぬいぐるみ】
・職業用ミシン JUKI SL-700EX
・綿 ふとんのみぞぐち 手芸綿
・針 クロバー ぬい針絆
【イラスト】
・コピックチャオ トゥーマーカープロダクツ
・コピック色紙 トゥーマーカープロダクツ
・ステッドラー鉛筆メタルケース入り12本セット ステッドラー日本
・クリエイティブスタジオオイルパステル36色セット ファーバーカステル
◆ライタープロフィール
河原夏季
朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。
SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。
1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。
クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。