「『絵具』と『宝石』がつながった、その感覚を作品に」 画家・TAKUYA YONEZAWAさん

画人画廊・on line vol.08 artist「TAKUYA YONEZAWA」2024年2月1日

「『絵具』と『宝石』がつながった、その感覚を作品に」 画家・TAKUYA YONEZAWAさん

 

※TAKUYA YONEZAWAさんの代名詞「PIGMENT JEWELRY-絵具の宝石-」シリーズ。

色をつくり、重ねることで生み出される「絵具の宝石」は、角度を変えるとまた違った輝きを見せてくれる。

画家のTAKUYA YONEZAWAさんは、宝石をモチーフにした作品を数多く発表しています。

宝石を描き始めたのは2019年。ある日の制作後、夕日が差し込むアトリエで目に入った光景がきっかけでした。

※愛用のペインティングナイフ。このペインティングナイフから美しい「絵の具の宝石」たちが生まれます。

「パレットに残った絵具に窓から夕焼けの光が差し込んで、キラキラときらめいて見えたんです。『宝石みたいだな』と感じました」

当時、「宝探し」がテーマの展覧会に向けて作品をつくっていましたが、「やや決め手に欠けていた」といいます。

「絵具」と「宝石」がつながった瞬間、「この感覚を作品にしよう」と決めたそうです。

※「ハワイアンビーチ」

「絵具はもともと、石(宝石)を砕いてつくられていたという背景もあり、『絵具』と『宝石』の関係にしっくりきました。絵具にとっては、原点回帰のようなものなのかもしれません」

最初に描いたのは、ダイヤモンドでした。

偶然から生まれた発想はその後、「PIGMENT JEWELRY-絵具の宝石-」シリーズとしてTAKUYAさんの代名詞になっています。

絵だけではなく、言葉で伝える

X(旧Twitter)のフォロワーが3万を超えるTAKUYAさん。

「絵具の宝石」はSNSを通じて多くの人に届き、たびたび話題になっています。2023年11月にカワチ心斎橋店で開かれた個展も、SNSがきっかけとなりました。

※2023年11月11日~23日までカワチ画材心斎橋店・画人画廊での個展風景。

TAKUYAさんはもともと個展を中心に活動していましたが、「絵で生きていく」ためには限界も感じていました。

「もっとたくさんの人に見てもらうためにはどんな方法がいいんだろう」

考えた末、2020年からSNSでの発信に力を入れ始めました。

時代はちょうどコロナ禍。展覧会の開催が制限され、今後の活動について改めて思いを巡らせていた時期でした。

作家自身がECサイトを作れるサービスが主流になってきたことも後押しとなり、「自分でプロモーションを行ってみよう」と手探りで発信を続けました。

絵だけではなく、「自分の言葉で発信することで伝わることもある」と考え、Xやnoteを中心に思いをつづっています。

「ワクワクを届けたい」

TAKUYAさんがSNSでもつづっているのは、「美術でワクワクを届けたい」という思いです。

※新年の幕開けを祝って描いた「初日の出」の宝石。「ファースト サンライズ」。

モチーフにしている宝石はまさに、「キラキラしていて、ワクワクする」もの。作品を通じて、「プレゼントをもらった時のようなワクワク感を届けたい」と話します。

購入者からは「大切な人へのプレゼントとして絵を贈りました」「お祝いのために買いました」という声が届くそうです。

一方で、宝石は「既存の型」があるため、表現の難しさも感じています。

ひとつ見いだしている魅力は、絵画ならではの「えぐみ」です。

※「雪結晶の宝石」絵の具で描かれたとは思えないくらい美しい。

※上の「雪結晶の宝石」の部分アップ。絵の具の凹凸や質感が感じられます。

「一見美しいけど、近くで見ると絵具の凹凸や質感を感じられる。ちょっとした生々しさがおもしろい。そんな意外性が宝石作品には隠れているのかもしれません」

見る角度によって色が変わる点も、アナログならではの表現です。

「いくつかのおもしろい要素を重ねていくイメージ」で作品を組み立てていくといい、「『意味』のレイヤーが重なっていくと厚みのあるものになる」と話します。

「届ける」活動を

SNSを通して多くのオーダーを受けるようになり、TAKUYAさんの中ではこれまで以上に絵具への関心が高まりました。

「自分が普段あまり使わない色でオーダーをいただくことがあります。その色についての理解を深めたいという思いで研究して知識も増えていきましたし、かなり絵具を買うようになりました」

同じ色であっても、メーカーによって質感やキャンバスに乗せたときの表情がかなり違うそうです。

※「オーロラホワイト」の正面からの写真と角度を変えてみた時の写真。同じ作品とは思えないくらい違った輝きを見せてくれます。

展覧会で「絵具の宝石」を目にした人からは「写真で見るよりもいい」と声をかけられ、実物を見てもらう良さを感じています。

「2023年は東京と大阪で展覧会をやらせていただく機会があり、次は何を目標にしようか考え中です。まずは『届ける』をメインに、多くの方のお手元にオーダー作品を届けていきたいと思います」

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◆プロフィール

TAKUYA YONEZAWAさん:北海道在住。毎年50作品以上の絵画作品を制作し、美術館や国内外のギャラリーなどで発表している。SNSでの発信に力を入れ、作品や制作過程、創作のヒントなどを発信。Xは@takuyanokaiga。

◆使っている主な画材

・アクリル絵具 アムステルダム レギュラータイプ ロイヤルターレンス
・アクリル絵具 アムステルダム パールシリーズ ロイヤルターレンス
・ペインティングナイフ リキテックス バニーコルアート
・ペンディングナイフ ロイヤルターレンス


◆ライタープロフィール

河原夏季

朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。

SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。

1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。

クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。

Twitter https://twitter.com/n_kawahara725

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