「私の技術をすべて伝えていきたい」動画投稿から生まれた変化 イラストレーター・雲丹。さん

画人画廊・on line vol.27 artist「イラストレーター雲丹。」2025年6月30日

「私の技術をすべて伝えていきたい」動画投稿から生まれた変化 イラストレーター・雲丹。(うに)さん

アクリル絵具を幾重にも塗り重ね、青を基調に描かれた女の子。ワンピースのフリルも細い筆先で丁寧に色をのせていく――。2024年1月、Instagramに投稿されたメイキング動画は、130万回近く再生され、8万を超える「いいね」がつきました。

作者はイラストレーターの雲丹。(うに)さん。アクリルをはじめ、透明水彩絵具、アルコールマーカー、色鉛筆など、アナログ画材を愛用し、SNSで作品やメイキング動画を発表しています。

絵を描くことは日常の一部

「絵を描くことが大好きで、幼少期は絵を描かない日はなかったと思います」

そのくらい「絵」は日常の一部だったという雲丹。さん。初めて手にした画材は、保育園用に買った水性マーカーでした。毎日使いすぎて、インクの減りは弟のものよりも早かったそうです。

※保育園のころに水性マーカーを使いはじめたのが最初だったそうですが、この作品はアルコールマーカーで描かれています。

描いていたのは、子どもに人気のキャラクターや漫画の登場人物ではなく、「想像の中にいる女の子たち」でした。

引っ込み思案な性格で友達づくりが苦手な雲丹。さんにとって、絵は「人とつながるきっかけ」にもなりました。

「小学校で休み時間に絵を描いていると、 『何描いてるの?』と声をかけてもらえました。絵があったから、友達ができたんです」

当時からイラストを描く仕事に就くと決め、卒業アルバムの「将来の夢」には「イラストレーター」と書きました。

※…そして今、あの頃描いていた「将来の夢」をしっかりと現実に。

高校生で「コミティア」に出展

中学校では美術部に入り、表現力を磨きました。高校に入るとSNSに作品を投稿するようになり、自主制作漫画誌展示即売会「COMITIA(コミティア)」にも出展。友人と画集やポストカードを作り、「作品を届ける」ことにも熱中しました。

「SNSで発表していくうちに私の作品を『好き』と言ってくれる人が増えてきたんです」。SNSで作品を見てくれていた人たちとコミティアの会場で交流することも多々ありました。絵はここでもコミュニケーションのきっかけになりました。

自分の絵が売れる経験を通して、イラストの道に進む意志はより強いものになりました。

※日本画を専攻されていたという雲丹。さん。なるほど、作品にもどことなく日本画っぽさが感じられます。

美術大学を目指して予備校に通い、3浪の末に合格しました。大学では日本画を専攻。並行してイラストの創作活動に力を入れ、イベントにも積極的に参加していたそうです。卒業後は企業に就職せず、フリーランスのイラストレーターとして活動をスタートしました。浪人時代から大学卒業までの7年間で、SNSの投稿を増やして知名度を上げたり、仕事をする上で必要なお金の知識を付けたり、企業からの仕事を受けたり、少しずつ“専業作家”として活動するための土台を築いていったそうです。

動画でメイキングを見せる

2023年以降は、YouTubeやTikTok、Instagramで作品のメイキング動画も投稿しています。撮影も編集も独学でした。

「今は動画が主流の時代で、専業作家になったときから動画での発信はしたいと思っていました」と雲丹。さん。

※メイキング映像で編集者が一番気になるのは、やはり使用している道具。この動画でも、冒頭に登場する「羽管筆」が気になりますね。

「最初は動画を撮りながらだと顔を近づけて描けなかったり、カメラが邪魔になってしまったりしましたが、少しずつ感覚がつかめて、動画制作にも慣れてきました」

※この作品のメイキング動画がコチラ↓

動画のコメント欄には、日本語だけでなく、英語、ベトナム語、フランス語、中国語など様々な言語も並びます。

メイキング動画を投稿していくうちに、「雲丹。さんの動画を見て絵を始めました」「長らく絵を描いていなかったけど、また描くようになりました」というコメントが届くようになりました。

「絵を褒めてもらう以上に、私の技術が誰かのモチベーションにつながっていることがすごくうれしく感じました」

「絵を描きたい人が気軽に学べる場」を作りたい

それまでは「私の絵を見てほしい」という気持ちが強く、SNSの反応や再生数を気にして落ち込むことがあったという雲丹。さん。

しかし、今はその気持ちよりも「絵の楽しさを伝えて、絵を描く人が1人でも増えてほしい」と話します。

※これから絵を描いてみたい人にとって、いちばん参考になるのって、作家さんのリアルな画材紹介じゃないかなと思います。

「人と関わることが得意ではなく、自分の絵に自信もなかったので人に教えるような立場にはなれない」と感じていましたが、絵を通じたコミュニケーションが背中を押してくれました。

「私自身、『自分の世界観』を確立したいというよりも、ずっと変わっていきたいし、どんどんスキルアップしていきたいと思っています。死ぬ間際に、『人生で一番いい絵』を描ける人間になりたいんです」

「だから、今の私の技術はすべて伝えていきたいですし、今後は絵を描きたい人が気軽に学べる場を作っていきたいと思います」

 


◆プロフィール

雲丹。(うに)さん:埼玉県在住のイラストレーター。ロリータファッションが好き。探究心の赴くままに思考を深め、絵を描くだけでなく、動画やブログを通じて表現の幅を広げている。2022年にはカワチ画材心斎橋店店内ギャラリー「心斎橋・画人画廊」で個展『uni.ca closet』を開催した。

ブログ:https://unica-closet.com/

YouTube(@unica_closet):https://www.youtube.com/@unica_closet

Instagram(@unica_closet_):https://www.instagram.com/unica_closet_/

 

◆使っている主な画材

・アナログ画材全般(透明水彩/コピック/アクリルガッシュなど)

【今後の展示予定】

● 2025年8月29日(金)〜9月7日(日)
atelier眞空 公募企画展『眞・零ノ肖像』#02

● 2025年11月12日(水)〜11月16日(日)
ぎゃらりぃあと 企画公募展『我蛇唸趣』


◆ライタープロフィール

河原夏季

朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。

SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。

1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。

クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。

Twitter https://twitter.com/n_kawahara725

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