少女漫画へのときめきを胸に…看護師と作家を両立する神谷かおりさんの世界

画人画廊・on line vol.35 artist「神谷かおり」2026年3月10日

少女漫画へのときめきを胸に…看護師と作家を両立する神谷かおりさんの世界

 

※ふんわりやさしいタッチの中に、花びら一枚一枚のていねいな描き込みが光る素敵な作品です。

ふんわりとしたやさしいタッチでイラストを描く作家・神谷かおりさん。その作品の数々からは、子どもの頃に夢中になった少女漫画を思わせる、どこか懐かしい雰囲気が漂います。

それもそのはず。神谷さん自身、幼い頃から少女漫画に親しみ、作品の絵をまねして描いていたといいます。

現在は看護師と作家を両立する忙しい日々を送っていますが、絵を描く時間は気持ちが落ち着く大切な時間になっているそうです。

少女漫画に心をときめかせて

「少女漫画のかわいい、ふわっとキラキラした感じが好きなんです」

神谷さんはそう話します。幼い頃、母親に「何か描いてみたら」と紙と鉛筆を渡されたことがきっかけで絵を描き始めました。

小学生になると少女漫画雑誌「なかよし」や「りぼん」を愛読し、キャラクターをまねして描いていたそうです。特に『カードキャプターさくら』(CLAMP)などのファンタジー作品に熱中していたといいます。

※森にすむ、薬屋を目指す狐の女の子が主人公のコミック『懐かしの森』の一部。

双子の妹もイラストを描くことが大好きで、一緒に描いては見せ合っていました。高校時代は2人とも漫画研究会に所属。神谷さんは就職後もイラストを続け、オリジナルの漫画も描いていたといいます。

自宅には天体望遠鏡があり、兄や妹と星を見て過ごすこともありました。「空を見て感動したことを絵に描きたいなと思っていました」と話します。

そんな神谷さんのイラストには、幼少期から親しんできた少女漫画の影響が随所にうかがえます。見る人から「懐かしい感じのイラストですね」と言われることもあるそうです。

切なさをにじませる表現

神谷さんが主にモチーフとして描くのは女の子。「やはり少女漫画が好きなので、とにかくかわいいものを描きたいという思いがあります。レースのひらひらした感じや、羽のふわっと柔らかい感じもとても好きで、描いていても楽しいです」

※神谷さんの作品は、レースの細部まで丁寧に描き込まれているところが、編集者のイチオシポイントです。

しかし、少女漫画だけでなく、アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』に魅了されてきた経験も作品に反映されています。「キャラクターはかわいいけれどストーリーは切なく、ダークな印象です。私もかわいい作品だけでなく、どこか切ない印象のイラストを描くことも好きなんです」

丸みのあるかわいらしいキャラクターも、瞳や眉毛のわずかな表情の変化で感情を表したり、色みをグレーやセピアカラーにしてアンティーク調に演出したりと、やさしさの中に切なさをにじませています。

看護師と作家活動の両立

高校卒業後、看護師として働く神谷さん。漫画の専門学校に進むなど絵の道も考えましたが、家庭の事情で就職することを決めました。以来、仕事と作家活動を両立しています。

神谷さんにとって、イラストを描くことは生活の一部であり、欠かすことのできない時間です。

最初の職場は総合病院で、命と向き合う現場で働いていた神谷さん。「仕事を始めたばかりの頃は、患者さんが亡くなると落ち込んでしまい、とても絵を描いてる気分ではないこともありました。ですが、仕事を続けるなかで『仕事は仕事、絵は絵』と考えられるようになり、絵を描くことで気持ちのバランスを保てるようになりました」

※花びらやエプロンのレース、ポケットのふくらみなど、質感や動きの表現にも注目してみてください。

現在は整形外科の病院に転職し、夜勤などに入りながら多忙な生活を送っています。それでも、帰宅後はすぐに絵を描くほど熱中しているそうです。

「本当はしっかり睡眠をとらないと体に負荷をかけてしまうのですが、絵を描いていると気づいたら夜中の3時になっていたということもあります」

初めての個展は「心斎橋・画人画廊」

神谷さんはもともと漫画を中心に描き、同人誌即売会「コミックマーケット(コミケ)」や自主制作漫画誌展示即売会「コミティア」に参加していました。しかし、コロナ禍でイベントの中止が続いた2020年以降は、透明水彩絵の具を使ってイラストを描き、展示会を中心に活動しています。

「時間がとれず漫画は描くことが難しいのですが、水彩画を始めてあらためて『私、絵を描くのが好きだったんだ』と実感しました」

2024年6月には、カワチ画材心斎橋店の店内ギャラリー「心斎橋・画人画廊」で、初めての個展「羽根のゆくえ」を開きました。

※2024年 カワチ心斎橋「心斎橋・画人画廊」で開催された個展のバナー画像。

「千葉在住なのですが、初めての個展で記念にと思って初日に参加させていただきました。多くの方と直接お会いできたこと、画材屋さんでの開催だったことも含めて、とてもうれしかったです」

いちから個展を開けるように

神谷さんは、「ひとつの作品に時間をかけて、自分が納得いくまで描いたものを世に出したい」と話します。

ひとつの作品を3日で仕上げたこともあるといいますが、「その間は少し睡眠時間を削っています」と打ち明けます。締め切りが迫っていても、「手を抜きたくない」という気持ちから追い込んでしまうそうです。

ただ、体調管理の大切さも実感しています。「今年インフルエンザにかかって、体調不良が長引いてしまいました。体調管理をしっかりしつつ、無理せず余裕を持って作品を描いていきたいなと思っています」

※額縁と作品の親和性はとても重要。展示会を開くとき、作家さんが一番悩むポイントのひとつだと思います。

今後については、「まだ夢ですけど……」と前置きしながら、こう話してくれました。

「ギャラリーの場所や日程、宣伝もすべて担当し、装飾品なども自分のカラーを出して、いちから個展を開いてみたいと思います」


◆プロフィール
神谷かおりさん:千葉県在住の作家。2020年より透明水彩を使用した作品を展示会に出展。2024年にカワチ画材「心斎橋・画人画廊」で個展「羽根のゆくえ」を開催した。同年、HUIONイラコン2024第1回にて優秀賞を受賞。「透明水彩でふわりと自分の好きな世界を描いています。作品を通して何かを感じてもらえる作品を描いていきたいと思います」

◆使っている主な画材
・透明水彩絵具(ホルベイン、クサカベ、ターナー、シュミンケ、ダニエルスミス、W&Nなど)
・水彩紙(主にウォーターフォード)

【今後の展示予定】
・3月4日(水)~15日(日)
ぎゃらりぃ あと 公募展「羽を持つもの」
大阪市北区黒崎町14-19
https://gallery-ato.jimdofree.com/

・3月19日(木)~23日(月)
イロリムラ プチホール ドローイングモール
大阪市北区中崎1丁目4番15号
http://irori2005.com/index.html

・3月25日(水)~27日(金)
ぎゃらりぃ あと 「ひらひら」
大阪市北区黒崎町14-19
https://gallery-ato.jimdofree.com/

・3月27日(金)~4月5日(日)
atelier眞空 「桜咲ク」
大阪市旭区今市2-12-1
https://atelier-shin-kuu.jimdosite.com/

・4月8日(水)~11日(土)
ARTs*LABo 「輝石 Exhibition」


◆ライタープロフィール

河原夏季

朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。

SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。

1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。

クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。

Twitter https://twitter.com/n_kawahara725

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