画人画廊・on line vol.06 artist「友風子」2023年12月16日
「見る人の心が和らぐように」透明水彩絵具で描く柔らかな世界 イラストレーター・友風子さん
柔らかな表情と透明感ある彩りで、あたたかい作品を描くイラストレーター・友風子(ゆうふうし)さん。
創作で意識しているのは、「見る人の心が和らぐ」ような表現です。
その想いは作品を通じてファンに届き、SNSでは「やさしい気持ちになれる」という感想がたくさん寄せられます。
主に作品のモチーフになっているのは、女の子や花、着物です。中でも花は「私のイラストに必須」と話し、季節感を表す一つとして、はかなさや華やかさを添えています。
※「パンジー」季節感と透明感が素敵な作品です
姉の影響で描き始めたイラスト
友風子さんは、漫画が好きな姉2人の影響で幼稚園の頃からイラストを描いていました。
小学生の頃の夢は漫画家。友だちの間で人気だった「セーラームーン」など、少女漫画のキャラクターをまねして描いていたといいます。
当時、「なかよし」や「りぼん」、「花とゆめ」といった少女コミック雑誌だけでなく、「少年サンデー」や「少年ジャンプ」も家にあり、漫画はとても身近な存在でした。
※「初期の頃の作品」
中学生の頃は美術部に入ってコミックイラストを描いていましたが、色塗りの中心は色鉛筆や学校で使う不透明水彩絵具でした。
現在につながる世界観が築かれたのは高校生の頃。友風子さんがパソコンで描いた絵を見た友人が、「水彩画が合うのでは?」と勧めてくれたことがきっかけでした。
そこから水彩画に興味を持ち、透明水彩絵具の存在を知りました。
※透明水彩絵の具は透明感を出す描画作品には最適。ちなみに写真の絵の具は分離色絵の具。1色でここまで世界観が広がります。
「学校で使っていた絵具と違い、重ねて塗っても下の色が透けて見えるのが新鮮で、衝撃でした。絵具を集めることが楽しくて、絵具を使うために絵を描くモチベーションが上っていました」
※色を混色するのではなく、重ねて質感や細部を描きこんでいくテクニックは流石です!
透明水彩絵具を使うイラストレーターの作品を見ては、透明水彩の世界に魅了されていったといいます。
「お絵かき掲示板」での経験
着物のイラストに挑戦したのも高校生の頃です。成人式に向けて着物のカタログが届くようになり、「資料」がそろっていたことも後押しになりました。
当時はやっていたインターネットの「お絵かき掲示板」に着物のキャラクターの線画を投稿すると、色をつけてくれるユーザーが大勢いました。「同じ線画なのに、塗る人が違うと世界が変わる」。表現の幅を感じた経験でした。
※「枝垂れ梅」金魚の尾っぽから透けて見える着物や髪の毛などに注目です。
どのようなイラストを描いたら反応をもらえるか、人の目に留まるのはどんなイラストかーー。「お絵かき掲示板」で試行錯誤を重ね、ぼんやりとイラストレーターの道を意識するようにもなりました。
絵具で表現できることとパソコンでできること、どちらも楽しんでいたといいます。
きっかけは雑誌への投稿
高校卒業後、専門学校で情報処理やプログラミングを学びながら、趣味としてイラストを続けました。
イラストレーターへの扉が開いたのは2005年。イラストのメイキング&投稿マガジン「スモールエス」に投稿した作品が大きく掲載され、翌月、出版社から仕事の依頼が入ったそうです。
※「こぼれる」描かれはいませんが春の暖かい木漏れ日が見えるようです。
同じ頃、初めてポストカード展に参加し、自身の作品を販売する経験もしました。作品が多くの人に認められ、2008年からは商業作品への活動も始めました。
専門学校を卒業後、一時は会社員として働きながらイラストの仕事を続けていましたが、漫画の連載など大きな仕事の依頼が増えて忙しくなったため、フリーランスとして活動することに決めました。
印象に残る二つの作品
友風子さんのイラストは、みんな「やさしい表情」をしています。
数々の作品を残してきましたが、特に印象に残っているのは2015年に出版した画集『彩 irodori』(復刊ドットコム)の表紙と、ガラスの破片とともに女の子を描いた「ガラス」です。
※「彩 irodori」2015年出版の初画集の表紙
表情のやさしさはもちろん、『彩 irodori』の表紙は、すべての四季の花を盛り込み、透明水彩絵具の魅力を存分に出すように花を透けさせました。「自分を出し切って描いた当時の集大成」と語る代表作です。
※「ガラス」上下共
「ガラス」は、「透明水彩絵具の透け感、思春期の繊細さを表現するためにモチーフを探した」2013年のイラストで、作品を投稿するSNS「pixiv」で多くの「いいね」がつきました。
「それまでは画面をデザインっぽくしなくちゃとなるべく全身描いていましたが、アップでも魅力的な絵を描きたいと思って顔を大きめに描いた作品でした。イメージ通りに色を塗れ、パッと目につく印象的な作品にできたと思います。ポストカードでもいまだに人気のイラストです」
原画展を通して感じてもらいたいこと
コミックスやSNSなどで多くの人に作品を届けている一方、個展の活動も広げていきたいと話します。
2022年夏と2023年秋には、カワチ画材心斎橋店(大阪市中央区)のギャラリー「心斎橋・画人画廊」で個展を開きました。
※「キンモクセイ」上 「またたき」下 またたきは2023年画人画廊・個展時のキービジュアル
個展の良さは、来場者とのふれあいです。SNSでは見られない相手の顔が見え、「いいね」などの数字だけではない温度感もあります。「見てくださる方から元気をもらっています」と話します。
原画ならではの良さもあるといい、「『ホワイト』を乗せたときの凹凸や、ラメが入った絵具の様子など、ネット上では感じられない部分を見ていただけます」と話す友風子さん。
※「イチョウ」個人的に一番好きな作品。
「今後も個展でたくさんの原画を用意して、いろんな方に喜んでいただきたいです」と願っています。
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◆プロフィール
友風子さん:東京都出身、大阪府在住。2005年より自主制作イラスト本の発表を始め、2008年より商業作品活動を開始。2015年にはホルベイン画材とコラボレーションした透明水彩絵具セットが発売されたほか、画集『彩-irodori-』(復刊ドットコム)が出版される。装画の代表作に『あやかしの鏡』シリーズ(講談社)、『さくらいろの季節』(ポプラ社)、『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズ(KADOKAWA)、『旺華国後宮の薬師』(KADOKAWA)がある。
◆使っている主な画材
・透明水彩絵具
メーカー:ホルベイン、マイメリブルー、ダニエルスミス、クサカベ、月光荘、ウィンザー&ニュートン、シュミンケ(使用頻度順)
・水彩紙
メーカー:アルシュ、ウォーターフォード
◆ライタープロフィール
河原夏季
朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。
SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。
1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。
クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。