「ビッグバンを表現」「人としてどうあるかを問い続ける」〝曼荼羅アーティスト〟織葉さん

画人画廊・on line vol.03 artist「Oruha」2023年9月5日

「ビッグバンを表現」「人としてどうあるかを問い続ける」〝曼荼羅アーティスト〟織葉さん

「曼荼羅(まんだら)は、ビッグバン(宇宙の始まり)や宇宙を表現するアートです」。曼荼羅アーティストの織葉(おるは)さんは、そう話します。

カワチ画材阪急三番街店(大阪市北区)などで展示や曼荼羅を描く体験会を開き、多くの人を魅了してきました。

※カワチ阪急三番街店でのイベント風景

旅先で出会った曼荼羅

曼荼羅との出会いは2011年。友人と旅行で和歌山県橋本市を訪れた際、宿泊した旅館に点描の曼荼羅が飾られていました。

「黒い紙に細かい点々で書いてある曼荼羅を見て、描いてみたいと思ったんです」

それまで本格的に絵を描いたことはありませんでしたが、ちょうど家に黒い用紙とミルキーペン(不透明インクのボールペン)があったことを思い出し、「帰ったら描いてみようと、軽い感じで考えていました」。

当時学んでいたカウンセリングの先生に、描いた作品を見せると、「もっとやりなよ」と背中を押されたといいます。「曼荼羅というのはビッグバンなんだよ」と教えてくれたのも、その先生でした。「中心から360度全方向に広がっているもの」とも教わったそうです。

それから曼荼羅に打ち込むようになったという織葉さん。その後、京都を訪れたときにも「曼荼羅は宇宙を表現している。曼荼羅は空間を整えるもの」「中心が大事だよ」と教えてくれた人がいたといいます。

いかに「自分」をそぎ落とすか

織葉さんが作品を描く際に意識していることは、「シンプルさ」です。

アートには作家の思いを乗せたり、個性を表現したりするものもありますが、「曼荼羅は自分自身を表現するというよりも、どれだけ『自分』をそぎ落としていけるかが大事」と話します。

「曼荼羅で表現するビッグバンには『制限』がありません。作品で『自分自身はこんな人間だ』と表現すると、そこには『制限』が生まれてしまいます。『自分』は描いた結果出てくるものかもしれませんが、結果論であって目的ではありません」

「自分を表現しよう」と思っていなくても、体験会などで参加者が描く曼荼羅には、その時々の喜怒哀楽が表れるといいます。

「何かに迷いがある人は、作品にも悩んでいる様子が出てきます。線がズレたり、真ん中に点を打ちたくても打てなかったり。迷いが晴れると、作品でもその様子が分かるんです」

体験会にはこれまで600人以上が参加しました。「『自分にはできない』とおっしゃる方もいますが、まずは描いてもらい『できる』ことを体験してもらっています。『できない』『難しい』という言葉を使わないほうが、人は早くできるようになると思います」と織葉さん。

「自分の持っている能力にも制限をかけないこと」が曼荼羅を描いていく上で大切だと力を込めます。

「人としてどうあるかを問い続ける」

※ミルキーペンは不透明インクなので黒い紙にもはっきり描く事ができます

自分自身を映す〝鏡〟のような存在でもある曼荼羅。

織葉さん自身、曼荼羅を描くうえでは「自分自身が人としてどうあるかを問い続けている」そうです。

12年前から描き続けている「水のこころ」というシリーズは、「水は万物の根源で形を変えていくもの」と聞いたことをきっかけに始めました。

「生涯をかけて描くことで、水とは何かを捉え、分かるようになりたいと思っています。自分の考え方・捉え方が変わっていったら、どんな風に描けるのだろうかということも楽しみです」

曼荼羅のデザインは、様々なものから影響を受けていると話します。

カトリック系の学校に通っていたこともあって宗教美術に親しみがあり、ステンドグラスや教会、神社仏閣の建築などにも興味がありました。

個展を開いた先で見つけた植物などの「自然物」や、年間300冊ほど読んでいたマンガの表現、仕事で訪れたインドで出会った人々の生命力、太陽のエネルギーなど、これまでの環境や出会ってきたものは、少なからず作品に反映されていると振り返ります。

曼荼羅を始めて干支が一周したいま、新たにアクリル絵の具を使ってキャンバスに描く挑戦も始めました。

※フィリピンでの展示会風景

「ずっと何かにチャレンジし続けていたい」と話す織葉さん。「今後は海外での個展を増やし、国境を越えて多くの人々に作品を見てもらいたい」と話しています。

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◆プロフィール

織葉さん:兵庫県明石市生まれ。外国語大学を卒業後、金融機関やセミナー会社に勤務。2011年、独学で曼荼羅を描き始める。翌年独立して曼荼羅アーティストとして活動を開始。以降国内外で個展を開催し、「ミニ曼荼羅体験会」なども開いている。影響を受けた画家はポール・シニャックやパブロ・ピカソ。

◆使っている主な画材

ポスカ

ユニボール シグノ 太字 1.0mm ホワイト、ゴールド


◆ライタープロフィール

河原夏季

朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。

SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。

1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。

クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。

Twitter https://twitter.com/n_kawahara725


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