愛猫と運命的な出会い…「てのり猫」ができるまで 羊毛フェルト作家のMEBARUさん

画人画廊・on line vol.14 artist「MEBARU」2024年7月30日

愛猫と運命的な出会い…「てのり猫」ができるまで 羊毛フェルト作家のMEBARUさん

 

※手のひらで見つめられてる感がすごくカワイイ。

手のひらにちょこんと乗る猫。色も、たたずまいも、まるで本物。

羊毛フェルト作家のMEBARUさんが1匹1匹丁寧に作る「てのり猫」です。体長は4~6センチほど。制作には1匹あたり40~50時間かかります。

MEBARUさんが会社員として働くかたわら、作家活動を始めたのは2017年。きっかけは、作家名と同じ名前の愛猫「めばる」の存在でした。

「めばるがいなくなる前に、形で残したいな」。衰えていくめばるを前に、そう考えていました。

愛猫「めばる」との運命的な出会い

めばると出会ったのは1995年のこと。ある日の仕事帰り、最寄り駅から自宅へ向かって歩いていると、歩道沿いの木の上で大きな声で鳴いている猫が目に入りました。

※今にも右前足をだして歩き出しそう!

こげ茶のしま模様のある「キジシロ」で、首輪は付けていません。

「助けなきゃ」

以前も飼い猫が木から降りられなくなった様子を見たことがあったMEBARUさん。「独特な鳴き方」から、遊んでいるのではなく降りられなくなったのだと感じたそうです。

近くの商店街からダンボールをもらってきて「降りてきていいよ」とその場で待ちました。

そんななか通りかかった男性が木に登って助けようとしてくれましたが、猫は飛び降りて走り去っていったといいます。

怖がらせてしまったかもと心配になった一方で、「降りられてよかった」と胸をなで下ろしました。

手がかかったけど、やさしい子

翌日は大雨でした。

「猫が鳴いてない?」。家族が気づいて外を見ると、窓のそばに1匹の猫が座っていました。もともと猫が好きだったMEBARUさんは、柄や雰囲気から一目で「昨日の猫」だと分かりました。

※耳の表現が推しポイントです。※編集者個人の感想です。

あの木から自宅までは2kmほどあります。「私の家とは逆方向に走り去っていったのに……」。縁を感じずにはいられませんでした。

すぐに家に迎え入れ、雨や汚れを拭いて動物病院に連れていきました。ぬれていたため小さく見えましたが、生まれて3、4年ほどのオスの成猫であることが分かったそうです。

野良猫のようでしたが人なつっこく、前日とは違うかわいい鳴き声でした。「めばる」と名付け、家で飼うことにしました。

「ずっと私にべったりで、食欲もすごい子でした」。家では何匹も猫を飼っていましたが、めばるは「手がかかる猫」。壁や柱で爪を研いでしまい、ぼろぼろだったそうです。

手はかかったものの、めばるには優しい一面もありました。MEBARUさんの子どもが泣くとどこからでも走って駆けつけてくれたり、ほかの猫同士でけんかしていると割って入って止めてくれたりーー。

22年間一緒に暮らしためばるは、2017年に旅立ちました。

旅立つ前の年から「よぼよぼ」のおじいちゃんでした。MEBARUさんは、めばるの姿を残しておきたいと感じていたといいます。

本屋さんで出会った羊毛フェルト

同じ頃、たまたま本屋さんで羊毛フェルトの存在を知りました。

「羊毛フェルトの本を見てワクワクしました。もともとものづくりが好きで、これなら本物の猫に近いものが作れそうだなって」

最初に作ったのは白黒の猫。技術が追いつかず模様を入れることはできませんでしたが、めばるの面影はありました。

以来、400匹以上の猫を制作。しかし、「めばるそのものは作っていない」とMEBARUさんは話します。

※左側の猫ちゃんの座り方に萌です♪

「めばるを思いながら、めばるっぽい猫はたくさん作っています。私は小さいめばるがほしいわけではなくて、めばるってどんなだったかなと思いながら作る時間が好きなのかもしれません。作っている時間で気持ちが解消されていくような感じです」

活動の幅は広がり、2023年にはカワチ画材心斎橋店の店内ギャラリー「心斎橋・画人画廊」で個展を開き、2024年2月には初の著書『羊毛フェルトで作るてのり猫』(日本ヴォーグ社)を出版しました。

「MEBARU×カワチ画材 コラボグッズ・じゆうちょう」こちらからご購入頂けます。

「羊毛フェルトで生活ができているのはめばるのおかげ」とMEBARUさん。「家族とも『めばるの恩返しじゃない?』と話しています」

めばるとの日々をイラストで発信するようにもなりました。「爪研ぎをしたり、周りの猫の面倒を見ていたり。そんなめばるの姿を残したい」。イラストをまとめた本の出版もめざし、活動を続けていくといいます。

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◆プロフィール
MEBARUさん:神奈川県在住の羊毛フェルト作家。2017年に独学で羊毛フェルトを学び、活動を始める。全国の百貨店などで雑貨販売イベントに参加。Instagramで羊毛フェルトの作品(@mebaru_felt_cat)やイラスト(@pinokotomebaru)を発信。大阪に仕事に行くときは必ずカワチ画材店へ。「見たことのない画材道具があって、刺激を受けています」

◆使っている主な画材
・クロバー フェルトパンチャー替針 スピード針
・クロバー フェルトパンチャー替針 仕上げ針
・ハマナカ 植毛ストレート
・ハマナカ ニードルわたわた


◆ライタープロフィール

河原夏季

朝日新聞withnews編集部の記者・編集者。

SNSで話題になっていることや子育て関連を中心に執筆。

1986年新潟県佐渡島に生まれ、中学時代は美術部。2児の母。

クリエイターさんたちの人生や作品へ込める思いを取材していきたいです。

Twitter https://twitter.com/n_kawahara725

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